出目王(デメキング)・・・6
携帯電話を手にして通知された番号を見ると見覚えの無い数字が並んでいる。
(誰だろう?)
と思い出ると
「ごめん!寝てた?」
と元気のいい女の声が耳に飛び込んで来ていっきに目が覚めた。
「誰?」
「私よ」
今度は声の主が瑞穂だということがすぐにわかった。
「幽霊やなかったみたいやな」
「ちゃんと足もあったでしょ」
確かに夕方会った瑞穂には両足はしっかりあった。
瑞穂に聞きたいことがいっぱいあリ過ぎる。
何故養成所に入ったのか。病気はどうなったのか。何故夕方黙って姿を消したのか。そして一番聞きたいことは 何故中学を卒業したとたん黙って自分の前から姿を消したのか。
とにかく謎だらけだった。
何から聞いていいかわからず、とりあえず自分の携帯の番号をどこで知ったのかを尋ねた。
「一カ月前に山下君と環状線で会って教えてもらったの」
中学時代からの友人の山下なら瑞穂に拓哉の携帯番号を尋ねられたら迷わず教えるだろう。
しかし拓哉の頭にある疑問が浮かんだ。
山下とは先週久しぶりに会いミナミの居酒屋で朝まで飲んだ。しかし瑞穂のことは何も話さなかった。
拓哉が瑞穂のことを忘れるのに半年かかったことも山下は知っていた。
そんなことを考えていると逆に瑞穂から質問をぶつけてきた。
「相沢君、相方は決まっているの?」
「今日入学したとこや、これから探すよ」
「良かったら私どう?」
「お前と?」
確かに瑞穂は中学の時笑いのセンスはあった。深夜放送に投稿してはよく記念品をもらっていて当時のパーソ ナリティーに名前を覚えられていたほどだった。
「私と組んだらすぐに売れるわよ」
「何言うてんねん」
「ぼやぼやしてたら他の人とコンビを組んでしまうわよ。それでもいいの」
彼女の積極的な性格は昔のままだった。
そして中学2年の夏、瑞穂と交際を始めた時も同じだったことを思い出した。
放課後補習を終え走って帰宅しようとする拓哉と部活帰りの瑞穂が正門を出たところでぶつかってしまい瑞穂は 転倒する。
拓哉は瑞穂を起こし謝った。
幸い瑞穂にケガはなくホッとした。
瑞穂はとなりのクラスだったが可愛いく活発で明るい彼女は拓哉のクラスでも人気があった。
その春に転校して来たばかりの瑞穂とは話したことは一度も無かった。
ひたすら謝る拓哉に瑞穂は
「許す代わりに家まで送ってね」
と微笑む。
川筋を3分ほど歩いたところで瑞穂が
「私前から相沢君のこと興味あったの」
「実は、俺もやねん」
それから5分会話がないままひたすら川筋を歩いた。
「相沢君、私と付きあってくれない」
「ええ!」
「ぼやぼやしてたら他の人と付き合うわよ。それでもいいの」
それから卒業するまでまわりも羨むような拓哉と瑞穂の恋物語が続いた。
「相沢君、私とコンビを組むの、組まないの」
と激しく返事を催促する。
「わかった。組もう」
「じゃあ、がんばろうね」
と一方的に電話を切る瑞穂。
結局拓哉が聞きたかったことは何も聞けなかった。
村上太
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