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2006年6月22日 (木)

沈まぬ携帯・・・28

麻は電話を切った。

そして、クスッと笑ってしまった。

切る前に、携帯の画面を見た。

麻が電話を切るまで、通話時間がカウントされていく。

太郎から切ろうとしていないのだと思った。

麻はイタズラ気分で、カウントされていく通話時間を見ながらカウントダウンし始めた。

(10、9、8・・・・・2、1、0)

0と同時にゆっくりとボタンを押した。


正直、病院で振り返った時に太郎が立っていた時はビックリした。

太郎と分かった時、一定のリズムでボールペンの後ろのボタンをカチャカチャ押していた指が止まった。

時間もが止まった気がした・・・。

電話番号を受け取ってから、麻はいろいろ考えた。

(電話していいのかなぁ?)

電話をかければ、麻はかけがえのない宝物が手に入るかもしれないと思った。

しかし、その新しい宝物を手に入れれば、今まで大事にしていた宝物を失くしてしまいそうな不安もあった。

でも、麻は太郎に電話をかけた。

新しい宝物を求めた。

太郎と喋りたい事は山のようにあったが、太郎の声を聞いたら声がでなかった。

太郎と喋っているという実感より、今までの太郎への思いが胸の中でグルグル回りはじめてドンドン膨らんでい

く。

割り箸で綿菓子を作っていくような感じで・・・思いがだんだん大きくなり胸がいっぱいで喋れなかった。

麻は電話を切ってからすぐにスケジュール帳をカバンから出した。

”今週の日曜にしよう ”

携帯を出してメールした。

「この前はごめん。今度の日曜に太郎くんと会います。がんばるね。ありがとう」

失くしたくない、もう一つの宝物・・・きつこにメールした。

太郎は電話を切ってから考えた。

(なかなか切らんかったけど・・・なんか言いたい事でもあったんかな?)

太郎は部屋で横になりながら、携帯の画面を眺めていた。

(なんかあったらすぐにかかってくるかなぁ?・・・ん?俺からかけた方がええんかなぁ?どうしよ?あんまりかけた

らしつこいかな?こうやって待ってて、もしかかってきてすぐに出たら、待ってましたオーラ満開かな?)

そんな事を思っている時、太郎はきつこには思わない感情を麻には感じている自分に気がついた。

そのまま、メールの画面にし・・・

「麻ちゃんと会う約束した~。何やろ?それだけ伝えたかってん。おやすみ」

ときつこにメールした。


部屋で横になり、サンテレビで延長に突入した阪神戦を見ていたきつこの携帯から

氣志團の『愛羅武勇 』が鳴った。

(メールや)

寝ながら手を伸ばし携帯を取って、メールを見た。

太郎と麻からのメールが来ていた。

寝転びながら二人の内容を読んだきつこは笑みを浮かべ、足元に置いてあったプーさんのぬいぐるみに軽く2発

『かかと落し』

をしながら・・・

「それでいいと思います」

と、かかと落しで迷惑そうな顔に見えるプーさんに言ってみた。

その頃、二宮も携帯の画面を食い入るように見つめ・・・

『出会い系サイト』の返事待ちをしていた。


『沈まぬ携帯・・・28』 兵動  大樹


今回で僕の出番が終わりました。

読んで頂いてた方・・・ありがとうございます。

あと2話で完結となります。

完結になりましたら『沈まぬ携帯』を愛読して頂いてた方と、この物語を書いていた3人で

オフ会をしたいと考えております。

日時はまだ未定ですが、場所はうめだ花月の上、5階にある「わたみ」で行いたいと思っております。

個人的に連絡が取れないので、参加希望の方はコメントを入れて頂きたいと考えております。

その人数で予約したいと思ってます。

よろしくお願い致します!!

あと2話!!!

お楽しみに~~~。


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2006年6月13日 (火)

沈まぬ携帯・・・27

中之島のS病院。親戚の叔父に見舞いに行ったが麻を見つけることが出来ない。
今日は休みなのか・・・。総合案内で尋ねてみようと廊下を曲がると麻らしき看護師が前を歩いてる。

「あの・・・。松下さん。」
「はい。」振り向いた麻は驚いたように目を見開いている。
「・・・どうしたんですか?」
「いや、親戚のおっちゃんがここに入院してんねん。見舞いはすんだんやけど、ジブンを探しててん。」「これ、俺の携帯の番号。」とあらかじめかいていたメモを手渡す太郎。
「・・・・・。」それを受け取ったが何も言わずに背を向け歩き出す麻。

「・・・待ってるから。」

その日から携帯を片時も離さず寝る時は枕元に置き、目覚めると着信がなかったかと携帯を開けてみるのだった。

3日後、覚えのない携帯の番号から着信。

「もしもし・・・。」
「・・・松下ですけど。」
「かけてきてくれたんや。ありがとう。」
「・・・。」
「この間は、いきなりでごめんね。」
「・・・いいえ。」
「あの、電話やったらなんか伝わりにくいから、会うことできひんかな?」
「・・・・・。」
「・・・あかんかな。」
「・・・わかりました。私の都合のいい日でもいいですか?」


『沈まぬ携帯・・・27』 ティーアップ前田

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2006年6月 7日 (水)

沈まぬ携帯・・・26

麻のアドレスを入れて送信しようとした瞬間、突然帰った日のきつこの顔が思い浮かんだ。
かと言って、今きつこに送るのも違う。前回が前回だけに今度きつこを誘う時は、もう付き合う気で誘わないとダメだろう。麻のことも気になってる今の状態で会っても、また同じことの繰り返しだ。
二人が親友同士だということも、これまたネックである。

そんなことをアレコレ悩みながら、携帯のアドレスをめくっていると、「コイツや!」という名前を見つけた。
その名前は、二宮浩二。
一人で考えてても答えはスグに出ないので、女のことは二宮に相談しようと救われた気持ちになり、内容をちゃんと確認もせずに、二宮に送った。
しかし文面は、
『今日の夜、久しぶりに会いたいねんけど。食事でも行けへんかな?』。

スグに返信があった。
『どないしてん、気持ちの悪い。
「会いたい」ってなんや! 「食事」ってなんや~~!! カルーセル植木君よ』

やってもた……。太郎は顔が熱くなるのを感じた。
内容は同じでも、男のツレに対する言葉と、年下の女の子に使う優しい言葉使いは、確かに違う。照れかくしに、スグに返信した。

『カルーセル植木って、10数年ぶりに言われたわ! 
ちょっと送る相手間違えただけや。でも、お前でええわ。今日空いてる? 1杯行かへん?』

2人はミナミで待ち合わせ、旨いラーメンとギョウザをガッツリ食べた。
そして、二宮行きつけのショットバーへ入った。

「そう言えば、この前のコンパの件のやけどさぁ」
太郎は、いかにも今思い出したかのようなていで、話をふった。

「え、どのコンパ?」
「ほら、あの先月の、21歳の子らで、無国籍料理とカラオケ行ったやつ」
「ああ、あのビミョーやったコンパか。それがどないしたん?」
「松下っていう子とか覚えてる?」
「ゴメン、あんまり名前とか覚えてない。顔見たら思い出すかも」
「え、でもお前、あの子がいいって言うてたやん」
「そんなん言うたん、俺? いちいち覚えてませーん」
「これや」

太郎は二宮に、コンパ後の大体の流れを手短に話した。
「ふーん、そんなことになっとったんや。そんで、そのどっちにしようか迷ってんの?」
「おう」
「マジで? どっちがエエかぐらい、自分でわかるやろ?」
「それが、二人がそれぞれ違うタイプな上に、親友同士やったりするから、ヘタなことは出来へんなーと思ってる間に月日は流れ……」

「お前のそのマジメっちゅーか、煮え切らんとこは変わらんなー」
二宮は、呆れた口調で続けた。
「大体、あのコンパの日から何日経ってんねん。しかも、その麻っていう方とはあれから一回も会ってないんやろ?」
「はい」
「考えてる間に取りあえず会えって。会わずにメールだけやったら、お互い妄想が膨らんで、会った時に『アレ?』ってなんぞ。実際会ったらどっちが好きなんかわかるわ」
「はは~ん、なるほど」
「はは~んとちゃうで、兄さん。とりあえずその麻って子、ナースなんやったらその子の病院でも行ってきたら? お前、彼女の病院知ってんの?」
「中之島のS病院の外科やって」
「ふーん。お前、病院に用とかないの?」

「あ、そう言えば! そこの病院に、うちの親戚が入院してるってオカンが前に言うとったような……」
「それをはよ言わんかい」

『沈まぬ携帯…26』 清水亜希

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2006年6月 1日 (木)

沈まぬ携帯・・・25

太郎は考えていた。

どうしてきつこを部屋に誘ったのか自分でも分からない。

きつこの事が好きなのか?

本当は一人になりたくなかっただけなのか?

相手は誰でもよかったのか?

ただ、一人になりたくなかった・・・?

何故、一人になりたくなかったのか?

一人で居ると麻のことを考えてしまうからか?

きつこを家に誘った時、きつこの口から『麻』の名前がでた。

その瞬間、何故か心に染みた。

胸の中が熱くなった。じんわりと熱くなった。

中学生の時、初めて友達と二人で梅田に映画を観に行った。

映画を観た帰りに、高校生にカツアゲされた時も同じように胸が熱くなった。

『緊張』

そうなった時に胸が熱くなるのか?

自分で知らないフリをして隠しているものをきつこに見つけられてしまったような。

そんな気がした。

たまに食事に行くきつこは『現実』

連絡もしていないが、一人で居る時に自然に(何をしているのかな?)と考えている麻は『空想』

どちらの事が本当に好きなのか?

そろそろ自分の本当の気持ちを、自分自身も知りたいと太郎は思った。

きつこがコンビニの前からタクシーに乗って帰ってから1週間が経っていた。

太郎はメールを打った。

「今日の夜、久しぶりに会いたいねんけど。食事でも行けへんかな?」

という内容だけを打った。

まだ、メールアドレスは入れていない。

麻かきつこか・・・

携帯の画面を見ながら深呼吸した。

選んだアドレスは・・・・

asada.7.7・・・。


      『沈まぬ携帯・・・25』 兵動 大樹。


 


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